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Story

Episode 02
不満

封印を守る為に人々はその規範を守り、心を強く保った。それが怪異の発生を抑え、そして発生した怪異から封印を守るために必要な力になるからだ。
特に封印を守っているこの都には厳しい戒律が敷かれていた。ましてや守人や守巫女は戒律を遵守し厳しい規範の中で生きていた。

「ようこそ、リン。今日から君の世話をするイツキだ」
「……」
「いきなり都に連れて行かれて戸惑うかもしれないが、君も今日から守巫女の一人だ。色々と規律を教えるのでしっかり守るように」
「……」

イツキはなるべく優しく目の前の少女に告げたが、少女は相変わらず無愛想なままだった。
それもそうだろう、急に親元から離されで、遠い地であるこの都で今日から厳しいルールの中暮らしなさいと言われたからだ。
しかし、この戒律を幼少より遵守してきたイツキはその苦悩がわからなかった。

「……大丈夫。すぐ慣れる。君は封印の近くには立ち寄らぬように沙汰があった。つまりあやかしを追い立てることはないということだ。それだけでもだいぶ負担はないだろう」
「……よくわからない。結局私は何をするの?」
「まずは、ここでの暮らしになれてほしい。わからないことがあれば私が助言するよ」
「……慣れろ…」

あやかしを追い立てるも何も、何も聞かされていないのだ。当たり前のように進んでいく、この都のルールが当たり前のように思っている人々の態度にリンは不満を抱いた。
またイツキからすると常識のように幼い頃からの責務として生きてきたのだ。この世にこの都の規範を知らない人間が居るとは思えなかった。

封印を守るために何故ここまでこの都の規範が厳しいのか。その理由を説明できる人物はこの世界には存在しないのだが、リンはその存在価値に疑問を抱いていた。

  • Illustration
    キョウ屋斎