Episode 02
残る言葉
モルタルで出来た町並み、様々なもので溢れた広いようで狭い小さな家でのわたし。
最初はそんな夢だった。
此処ではないどこかの夢の話はとても新鮮で、わたしは家族や友人に嬉々として話をした。
そして、ナナモナだけがまともに話を聞いてくれた。
自分でも自分が子供だとわかる頃からナナモナにたくさんの夢を話した。
小さな家のわたしはもっと遠い世界に憧れを抱いていた。そのわたしは誰にも告げることが出来なかったが、たしかに憧れを抱いて冒険を渇望していた。
それでも今のわたしよりも沢山の世界を見れていたのが羨ましかった。
きっと、わたしの世界にも大きな冒険が待っているのだと思えた。
そんな夢物語をいっぱいナナモナに語れたのが誇らしかった。
その後もたくさんのお話を夢見た。
森を切り開いて作られた美しい街並み、炎に包まれた巨大都市、どこまでも続く朽ちた遺跡、不思議な技術にあふれている部屋。
月日を重ねるごとに夢は広がり続けたが、わたしは孤立していった。
それらはきっとこの山の向こうに広がっていると思っていたが、大人はそれを認めてくれなかった。
そして大人になってきた自分も、大人が伝えたい空気はわかっている。
「きっとあるよ! いっしょに見に行こう!」
それでも、あの時のナナモナの言葉が、わたしの中にはずっと残っている。
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Illustration唯浦史