Episode 01
新世界の創造と崩壊
「ここからなにか出来ることはない?」
「ちょっとわからないですね…」
答えは知っていた。できることはある。
けれど、同僚から返ってくる答えは責任をとりたくないという感情だった。
今、この研究室では非常に珍しい新世界の創造と崩壊を観測していた。
皆は厄災の最中に生まれた複数の世界に夢中だ。
生まれ始めた世界が拡張を続けつつ同時に崩壊していくこの状態は観測史上初めての事態だった。
「このままだとこの世界、消えちゃわない?」
誰かが放った言葉が引っかかる。誰もが何か出来るはずなのに、何も行動に移せない。
観測できた世界に干渉することは禁止されていないし、自分たちの世界ですらより高次の存在に影響を受け崩壊を免れた世界だ。
SNSに「崩壊を防ぐために誰か一緒に協力出来ないか?」と書き込んだが誰からもアクションは来ない。
誰もが責を恐れ無干渉を貫いていた。
そんな空気が私は嫌いだった。
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