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Story

Episode 01
邂逅

私は濃い霧の中をひたすら進んだ。
少し前からあのモヤたちは現れず、何も道を阻むものがない事に慣れて軽快に前に進めるようになった。

いつからだろう、この迷宮に入ったときに多く感じた、誰かの気配はなくなった。此処には自分一人しか居ないということがなんとなくわかる。
霧の中、あまり見栄えの変わらない遺跡を何日も一人ただただ進んだ。

大きな音がした。誰かがいる。
足早に霧の中を進むと道が開けたところで大きな存在が動いていた。
それはこの遺跡でよく見かける巨大な石像。その石像が黒いモヤをまとって一人の少女に襲いかかっていた。
その少女はすました顔をしながら、細剣を振るう。
シィーンという音とともに石像をなめるように細剣が這うと、黒いモヤがはぎ取れていく。
その音と姿は美しく、この迷宮に挑む強さと気品を感じた。
そして、自分には訪れない困難を恥じた。

私は一向に前に進んでいる気がしない。でも少女は一人大きな困難に立ち向かっている。
同じ場所までたどり着いているのに過程が違う。なぜかそれがすごく恥ずかしく思え、そして彼女が困難に立ち向かっていることに憧れを抱いた。

やがて石像は段々と動きが鈍くなり、最後のモヤを細剣が削り取った。
石像は動きを止め、いつものように静寂が辺りに漂う。

「……あ、あの…!」
「……」

リンは彼女に声をかけた。しかし彼女は一瞥したが、すぐに辺りに増した霧の中に姿を消した。

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    usi