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Story

Episode 02
幻聴

100年かかっても踏破することができないと言われている、大迷宮。
そこは異界と繋がっていると言われ、入る人によって姿を変え複雑に入り組んでいた。
冒険者達は皆その迷宮に挑んだ。
より深く潜れば潜った冒険者は人々から尊敬され英雄と称された。

英雄に憧れた私もその迷宮へ飛び込んで、数年がたった。

その間、私はどれだけ奥へと進めただろうか。
まだ入り口なのか、それとも誰よりも奥に進んでいるのか、それすらもわからない。

空が見えない迷宮の中なのに、進めば進む程に雨脚は強くなる。
その冷たさに体の感覚はなくなり、雨音と水面を踏む足音のノイズに耳が支配され自分の声も聞こえなくなる。
ただ広いだけの空間がそこにはあり、水滴に邪魔された視覚だけが私の唯一の感覚だった。
それでも視覚が残っていて助かったと感じた。私は前に進んでいる。

先程自分を蝕む黒いモヤは消えた。
黒いモヤに包まれているとき、私は視覚がなくなった。その代わり静寂に包まれ、自分の声しか聞こえなくなる。
どこまでも見えない暗闇の中がむしゃらに剣を振ることしかできない。
後ずさりながら少しずつそのモヤを払い、ノイズを取り戻す。
この迷宮に足を踏み入れたあと何度も繰り返した作業だ。

そういえば、初めてかもしれない。雨音の中、かすかに人の声が聞こえた。
しかし音の聞こえた方を見つめたが、そこには雨の雫で波紋が広がる水面が広がっているだけだった。

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    usi